スタジオ大四畳半

スタジオ大四畳半は書籍の企画・執筆・編集などを行っています。四畳半から一軒家に昇格。

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合縁奇縁

      2011/07/20

僕がまだ中学生の時分、どこかで入手した漫画雑誌に掲載されていたある作品に心を奪われたことがある。雑誌に収録された10近くの作品の中で、一際光り輝いていたその1作品。その作品にひどく心を打たれた僕は、何度も何度も読み返したものである。しかしながら、いつの間にか雑誌は手元からなくなり、作者名も作品名も、雑誌名すら覚えてなかったため、再び読む術がなかった。いまならインターネット検索で探し出せるのかもしれないが、当時はインターネット検索は今のようにメジャーではなかったのだ。当時の僕はふと気付いたら、書店でその作者の本を画風だけを頼りに探していた。しかし、どんな大型書店へ行っても見つからなかった。その漫画家は相当マイナーな作家であるようだった。時間が経つにつれ、あきらめと、目まぐるしく変わる日々の生活の中でいつしかその作品の存在を忘れてしまっていた。

そして現在、物体がカオス理論で配置され、エントロピーが増大しまくっているtatumiの部屋で、僕は何気なく床におかれたダンボールの中にある無数の漫画の中の一冊を手にとった。

本の表紙から入手された視覚情報が、脳のニューロンにナトリウムイオンの大量の流入を引き起こした。いくつかのシナプスで興奮は伝達し、永きにわたり使われることのなかった記憶のネットワークが、 瞬時に蘇った。

震える手でページを捲った。口から、意味を成さない言葉が漏れた。tatumiが怪訝な顔をして覗き込んだ。

収録作品の2作品目でついに僕は「それ」と再会した。

「探した……探したぞ……」。記憶の中で美化されるというのはありがちな話であるが、現実の「それは」やはり素晴らしかった。嬉しさと懐かしさと照れくささで胸がいっぱいになった。

兵庫県で当時15才の僕が失ったもの。それが7年という時を経て、北海道から来た青年の手によって僕に再びもたらされた。不思議な縁によって、空間と時を隔て、生きてる間にまたこの漫画に巡り逢えた事に、ただただ喜んだ。涙が出てきた。

万感の想いで咽び泣きながら、僕は作品を声に出して読んだ。tatimiがひどく気まずそうな顔をしていたが、気にならなかった。

僕は再びこのエロ漫画と再会したのだ。

 - 雑文 ,

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